マヌエル・プイグ〈Manuel Puig


『天使の恥部』PUBIS ANGELICAL〈国書刊行会 文学の冒険〉

 訳:安藤哲行/カバー:シーラ・メッツナー/発行:1989831

豪奢な寝室で彼女は目覚める。夢のような前夜の記憶、下腹部には引き裂かれたような痛みがあった。女は映画スター、世界一の美女。軍需産業王の夫が彼女のために用意した楽園はしかし、電流を通じた鉄柵で囲まれた甘美な牢獄だった。ある夜、舞踏会で見知らぬ男が囁いた、彼女の出生にまつわる秘密。30歳になったとき彼女は、死者との密約により他人の思考が読めるようになるというのだ。彼女は男と恋におち、島からの脱出を決意するが……極変動後の地球、未来都市。セックス冶療部に勤めるW218はある日、理想の男性と出会う。LKJSと名のるその男との夢のような一夜。過去の時代の豪華な衣装、郊外へのドライブ、秘密のキャバレー、めくるめく官能の夜。しかし男は某国のスパイ。女の恥部にすべりこむ男の指には分析用のプレートがにぎられていた……1975年、メキシコシティ。病の床に伏すアナは語る。アルゼンンチンでの生活。ペロニズム、階級意識、映画、フェミニズム、テロ、家族のこと、愛人のこと。くりかえされる対話、夜ごとの夢。アナは語り続ける。自己について、孤独について、愛について……スパイ小説、SF、ロマンス小説、ポルノグラフィーなどさまざまなスタイル、さまざまな声で織りなされる物語の数々。「蜘蛛女のキス」のプイグが描き出す、夢みる女たちの哀しい恋物語。

 

『蜘蛛女のキス』EL BESO DE LA MUJER ARANA〈集英社文庫 フ8-1

 訳:野谷文昭/カバー:毛利 彰/発行:19881025

「触ってもいい? こんな風に触ってもいい? こうしても? あたしに撫でられて、気持悪くない? よかったら、あたしに好きなことしていいわよ……」ブエノスアイレスの刑務所の中で生まれた、テロリストとホモセクシュアルの、妖しいまでに美しい愛。アルゼンチンの作家、アヌエル・プイグの野心作。映画化では、ウィリアム・ハートが、その名演技で〈アカデミー主演男優賞〉を受賞して、世界の話題をさらったものである。

 

『赤い唇』BOQUITAS PINTADAS〈集英社文庫 特5-6

 訳:野谷文昭/カバー:岸並千珠子/発行:19941125

人々の欲望が渦巻くパンパの町。女たちはハリウッド映画のロマンスを夢見、男たちはタンゴの歌詞で女を誘惑する。美貌の青年が結核で死んだ。その母親のもとに、町のビューティー・クイーンだった女性からお悔やみ状が舞い込む。そこで明かされる意外な事実。二人の間に何があったのか? メロドラマのスタイルを借りてプイグが鮮やかに描き出す、青春群像。クールで熱いラブゲームが今廻る。