トーマス・M・ディッシュ〈Thomas M. Disch〉
長篇
『人類皆殺し』THE GENOCIDES〈ハヤカワ・SF・シリーズ3174〉
訳:深町眞理子/カバー:中島靖侃/発行:1968年3月15日
町、農場、砂漠、ジャングル、ツンドラのべつなく、地球は一面、深緑のカーペットにおおわれた――眼に見えぬ播種者によってまかれた無数の微細な胞子が、いま高さ六百フィートの大木に成長しつつあったのだ。《植物》は地上のあらゆる草木を絶滅においやり、加速的に繁殖するにつれて、それは人類から土地を剥奪し、ついには生命の存在をも脅かした。世界の大都市は次々と崩壊に瀕し、文明は滅び去った――天空から舞い降りてきた奇妙な球体に、生きとし生けるものが、焼き殺されたのだ! そして、球体の中では――〈計画完了予定期限、1980年2月2日――本隊ハ1979年7月4日付ノ指令ニシタガイ、アクマデモ完全ナル焼却ヲ遂行スル予定〉ミネソタ州タッセルの山奥では、数十人の人々が奇蹟的に生き延びていた。《植物》の幹の中に空洞を発見した彼らは、そこを避難所にして、人類最後の生命をともしていた……! 最新鋭のアメリカSF作家トーマス・ディッシュが一片の救いも光明もなく描いたかつてない破減テーマSFの野心作!
『人類皆殺し』THE GENOCIDES〈ハヤカワSF201〉
訳:深町眞理子/カバー:金森 達/発行:1976年8月15日
町、農場、砂漠、ジャングル……あますところなく地球は一面、緑のカーペットにおおわれた。宇宙からの目に見えぬ播種者がまいた無数の微細な胞子は、いま高さ六百フィートの大木に成長しつつあったのだ。名づけようもない《植物》は草木を絶滅においやり、人類から土地を剥奪し、ついには人の生命を脅かし、加速的に繁殖する! 世界は崩壊して、文明は滅び去った……。広大無辺な宇宙に人類の卑小さを冷徹な目で見つめるディッシュが、従来の妥協的なパターンをまったく捨て去り、一片の救いも光明も残さぬかつてない破滅テーマSFへ、迫真の筆をふるった野心長篇!
『プリズナー』THE PRISONER〈ハヤカワSF233〉
訳:永井 淳/カバー:角田純男/発行:1977年3月31日
引退した元情報部員の目覚めたその村には名前がなかった。そればかりか、村人たちはひとり残らず番号で呼ばれている。本屋の主人は98号、清掃夫は189号、ウェイトレスは127号、そして彼自身はなんと6号にされていた! なぜこんな村に彼はいるのか? この村の正体は、またその目的はなにか……? 渦まく疑惑の中で必死の逃亡をはかる彼――6号。しかし、その努力は錯綜する虚実の迷路にむなしく消え、ついには彼自身さえ村の重要人物になってしまうのだった! 異色のテレビ映画『プリズナーNo.6』に材をとり、鬼才ディッシュが悪夢的な世界をサスペンスフルに描く。
『虚像のエコー』ECHO ROUND HIS BONES〈ハヤカワSF370〉
訳:中桐雅夫/カバー:鶴田一郎/発行:1979年11月30日
ハンサード大尉は、六週間後に火星の全核爆弾を敵にむけて発射せよとの極秘書類を携えて、物質転移機で地球から火星へとジャンプした。だが、大尉がジャンプしたまさにその時、もうひとりのハンサードが出現したのだ! 火星に着いた彼と、地球に残された“こだま”の彼が……。この〈エコー効果〉によって生じた複製は、同様の複製としか接触できない。通常の世界に属する人々にとり、複製のハンサードは存在しないも同然なのだ。しかも地球を破滅から救う鍵を握っているのは、この虚像となったハンサードだった! 転移機の生み出した虚像と実像の錯綜する戦慄の世界!
『334』334〈サンリオSF文庫22-A〉
訳:増田まもる/カバー:篠田昌三/発行:1979年8月5日
334とはなにか? 2021年、人口の超過密に対処するためアメリカには抑圧的な福祉国家が出現していた。政府はモディカム計画と称して2000人以上も収容できる巨大な建物を次々と作って全都市のスラム化を防ごうとしていた。さらに飲科水に不妊剤を混ぜ、一定の知能指数に達しないものは結婚して子供を生むことができないことになっているのである。334とは、ニューヨークの東11丁目にあるそうした巨大建物の一つなのだ。住人たちは11歳で成熟した大人となり、女同志で結婚することもあれば、男が乳房を移植して赤ん坊に乳をやることもある。SF界屈指の技巧家といわれるディッシュは、こうした完全に疎外された世界での人間の愚行――恐怖、無気力、エゴイズム、自棄など――を6つの短篇からなるオムニバス形式で純粋培養してみせ、そのアイロニカルでブリリアントな筆致の冴えによってネビュラ賞の候補作品となった。
収録作品
『歌の翼に』ON WINGS OF SONG〈サンリオSF文庫22-B〉
訳:友枝康子/カバー:角田純男/発行:1980年8月5日
ダニエルが5歳のとき、母親が失踪した。翔ぶことを習いたかったからだという。だが、それは法律で禁じられていた。彼が14歳になった冬、全国的な危機が訪れた。食料も燃料も小遣いも乏しくなった彼はスター・トリビユーンを配達して収入に当てたが、わいせつ罪、扇動的文書の販売及び所持の罪で刑務所に収容された。冷酷な町の有力者の奸計だった。腐敗と虐待……鉄格子も有刺鉄線もないかわりに、境界線を越えると内臓に埋めこまれたP・W錠剤に無線装置が働いて爆発する仕掛けになっていたのだ。やがて刑期を終えてボウアと結婚した彼はハネムーンに旅立った。だが、2人は予定を変えて国立第一飛翔基地へ向った。そこの飛翔装置に入って歌をうたって肉体から精神を解放して翔ぼうというのだ。ところがボウアは、翔ぶのにも歌うのにも失敗した彼と自分のぐにゃぐにゃした体を残したまま翔んでいってしまったのだ……ディック(原文ママ)7年ぶりの最高傑作をどうぞ。
『キャンプ・コンセントレーション』CAMP CONCENTRATION〈サンリオSF文庫22-C〉
訳:野口幸夫/カバー:山中一正/発行:1986年11月20日
本書は1967年、当時ニューウェーブSFの熱さめやらぬイギリスにおいて、その牙城たるニュー・ワールズ誌に連載された。以後、20年の時間の経過の中で、ニューウェーブSFは様々な毀誉褒貶のもとに置かれ、それぞれに自己解体を余儀なくされていった。しかし、このムーブメントの正当な評価は、所詮、その中から産みだされた幾多の傑作を精読することによってしかなしえない。本書は、確かに前衛的な文学手法をSFに導入した、前衛的なSFである(SFの手法を「普通小説」に採り入れた前衛的な文学作品と遜色はない)。同時に、P・K・ディックのようなしたたかな先輩作家に深い衝撃を与えるリアリティも内包していた。その意味で、60年代を代表する傑作SFの一つであり、SFの可能性を極限まで追求した壮大な企図である。
『ビジネスマン』THE BUSINESSMAN A TALE OF TERROR〈創元推理文庫F551‐1〉
訳:細美遥子/カバー:佐藤 仁/発行:1990年9月7日
ジゼルは霊魂となって、墓のなかで目覚めた。そして癌に蝕まれた彼女の母ジョイ=アンが、ジゼルの墓まいりの最中に絶命するのといれかわりに、幽霊として解き放たれる。自分を殺した夫――神経を病んだビジネスマン――のもとへと……。一方、ジョイ=アンが目覚めたのは、この世のパロディめいた、天国と現世のはざまの世界だった。娘を助けようとして地上界に降りたショイニアンだったが……。二人が出会う、昇天できない幽霊たち。そしてシゼルが産み落とす、邪悪な赤ん坊……。異才が、ユーモラスに、かつ辛辣に描いた、驚異の現代小説。
『M・D(上)』THE M. D.〈文春文庫 テ7−1〉
訳:松本剛史/カバー:山田博之/発行:1996年2月10日
あれほど心から信じていたサンタクロースの幻想が打ち砕かれたあと、六歳の少年ビリーの前に現れたものは、異教の神マーキュリーと名乗った。そして、死んだ鳥の翼をくくりつけた一本の杖を残していった――“カデューシアスの杖”。それに呪いをかければ、願うことがすべてかなう。が、それには大きな代償もともなう……。
『M・D(下)』THE M. D.〈文春文庫 テ7−2〉
訳:松本剛史/カバー:山田博之/発行:1996年2月10日
カデューシアスの杖がかなえてくれる恩恵、それは全能といってもいいくらい大きい。だが、秤を平衡に保つかのように、予期せぬ災いが身近にふりかかる。それはやがて、エイズをしのぐ終末の病となって世界を覆いつくす――フランケンシュタイン譚をどこか思わせ、しかし善意の人みなが巻きこまれてしまう、裁きの日の恐怖!
『いさましいちびのトースター』THE BRAVE LITTLE TOASTER〈ハヤカワSF1167〉
訳:浅倉久志/イラスト:長崎訓子/発行:1996年11月15日
だんなさまは、いったいどうしたんだろう? 森の小さな夏別荘では、主人に置き去りにされた電気器具たちが不安な日々を送っておりました。ある時ついにちびのトースターが宣言します。「みんなでだんなさまを探しに行こう!」かくしてトースターのもとに電気毛布、掃除機、卓上スタンド、ラジオなどが集結し、波乱に満ちた冒険の旅に出たのですが……けなげでかわいい電気器具たちの活躍を描く、心温まるSFメルヘン!
『いさましいちびのトースター火星へ行く』THE BRAVE LITTLE TOASTER GOES TO MARS〈ハヤカワSF1297〉
訳:浅倉久志/イラスト:長崎訓子/発行:2000年1月31日
『いさましいちびのトースター」ですっかりおなじみ、ぴかぴかボディのトースターと愛すべき伸間たち。小言の多い掃除機、気の弱い電気毛布、おしゃべりなラジオ、これに、補聴器、電卓、電子レンジ、天井扇風機の新たな伸間がくわわり、彼らが目指すのはなんと火星! でっかい冷蔵庫が支配する火星の電気器具国家の野望をくじくため、いま宇宙へと旅立つ! かわいい電気器具たちのけなげな胃険を描くSFメルヘン第2弾。
「いさましいちびのトースター」より九年を経て、あの勇敢なトースターが帰ってきた!(キャプション)
トースターたちは、はたして地球を救うことができるのでありましょうか!?(キャプション)
短篇集
『アジアの岸辺』THE ASIAN SHORE『国書刊行会 未来の文学』
編訳:若島正/カバー:?/発行:2004年12月15日
女がノックし続ける間、彼は家具のない部屋に腰掛け、ヨーロッパとアジアの岸辺のはざまの黒い水面を行き来する連絡船を見つめていた……異国の地イスタンブールでの一人の男の彷徨を緊張感溢れる筆致で緻密に描き、異様な完成度を誇る表題作をはじめ、本を読んで金儲けする方法を説く爆笑短篇『本を読んだ男』、想像上の恋人の子供を身ごもった女の哀しい物語『リンダとダニエルとスパイク』、少女が〈快楽島〉で体験する災難を情け容赦なく描く問題作『犯ルの惑星』、そしてディッシュの驚くべき超絶技巧が存分に楽しめるニュー・ウェーヴSFを代表する名作『リスの檻』まで――特異な知的洞察力で常に人間の暗部をえぐり出す稀代のストーリーテラー:ディッシュ、本邦初紹介8篇を含む初の短編集にしてベストコレクション。
収録作品
訳:浅倉久志
『年間SF傑作選5』収録(訳:大谷圭二)
訳:渡辺佐智江
訳:伊藤典夫
『S‐Fマガジン125号』掲載(イラスト:中島靖侃)
『20世紀SF3』にも所収
訳:浅倉久志
『ミステリマガジン453号』掲載(イラスト:浅賀行雄)
想像上の恋人を相手に身ごもった女性(キャプション)
訳:林 雅代
訳:若島 正
訳:渡辺佐智江
訳:大久保 寛
訳:林 雅代
訳:渡辺佐智江
訳:若島 正
訳:浅倉久志
『ミステリマガジン464号』掲載(『読書する男』イラスト:古川タク)
SF界の異才がそっと教える本を読んでお金を稼ぐ方法(キャプション)
訳:若島 正
短篇
「創造性の問題」Problems of Creativeness
『S‐Fマガジン172号』掲載(訳:大和田始/イラスト:佐治嘉隆)
「永遠なる現在」Now is Forever
『時のはざま』所収(訳:団 精二)
『S‐Fマガジン218号』掲載(訳:団 精二/イラスト:金森 達)
永遠なる美、変わらぬ愛。煩いもなく、すべては善きいま。それは快楽に満ちたこの世の楽園。〈物質再製機〉のもたらす世界……(キャプション)
「鐘の王女」The Princess' Carillon
『S‐Fマガジン291号』掲載(訳:佐藤高子/イラスト:岩淵慶造)
『NW-SF13号』掲載(『鐘は高らかに』訳:山田和子/イラスト:山田和子)
「ナリトロンの発見 −実験結果の共同報告書−」The Discovery of Nullitron
共著:ジョン・スラデック
『S‐Fマガジン300号』掲載(訳:浅倉久志/イラスト:浅賀行雄)
「ジョシーとエレベーター」Josie and the Elevator
『S‐Fマガジン435号』掲載(訳:山田順子/イラスト:とり・みき)
わがまま娘ジョシーは、いたずらの報いとしてとんでもない場所へ連れてゆかれる(キャプション)
「バニー・スタイナーの誘拐」The Abduction of Bunny Steiner, or a Shameless Lie
『S‐Fマガジン504号』掲載(訳:浅倉久志/イラスト:米田仁士)
彼が書いたUFOノンフィクションは、予定通り(?)大反響を呼んで……(キャプション)
「憂鬱の女神のもとに来たれ」Come to Venus Melancholy
『S‐Fマガジン525号』掲載(訳:山田順子/イラスト:米田仁士)
わたしは詩を愛するサイボーグ。いとしいジョンは去り、ひとりいま……(キャプション)
「ナーダ」Nada
『S‐Fマガジン637号』掲載(訳:田中一江/イラスト:佐治嘉隆)
ナーダは、内に何かを隠していると感じさせる十二歳の女の子。でも彼女の望みは……(キャプション)
「ダニーのあたらしいおともだち」Danny’s New Friends from Dened
共著:ジョン・スラデック
『S‐Fマガジン637号』掲載(訳:酒井昭伸)
「ジョイスリン・シュレイジャー物語」 The Joycelin Shrager
Story
『S‐Fマガジン637号』掲載(訳:若島 正/イラスト:佐治嘉隆)
評論家ドナルド・ロングは二度めの離婚以来、恋をしたことがなかった。その日までは……(キャプション)
「五つの卵」Eggs
『ミステリマガジン260号』掲載(訳:山本俊子/イラスト:村上 遊)
「無神論者の契約」 The Atheist's Bargain
共著:ジョン・スラデック
『ミステリマガジン478号』掲載(訳:深町眞理子/イラスト:杉本一文)
神を信じない男が悪魔を信じた!? 『黒いアリス』の共作コンビによる異色作(キャプション)
「まぬけな大恐龍の侵略」The Invasion of the Giant Stupid Dinosaurs
『別冊・奇想天外15号』掲載(訳:宮城 博/イラスト:楢 喜八)
「ツル草物語」The Wandering Jew
『Omni日本版29号』掲載(訳:伊藤典夫)
「ゴキブリ」The Roaches
『年刊SF傑作選6』所収(訳:吉田誠一)
「地球見物」A Vacation On Erath
『年間SF傑作選7』所収(訳:大谷圭二)
「われらの数字」The Number You Have Reached
『ホークスビル収容所』所収(訳:冬川 亘)
「五点形」Quincunx
『新しいSF』所収(訳:野口幸夫)
「老いゆくもの」Mutability
『アンティシペイション』所収(訳:宮城 博)
「フクロウと子猫ちゃん」The Owl And the Pussycat
『999−妖女たち−』所収(訳:田中一江)
「狼の一族」His Own Kind
『狼の一族』所収(訳:若島 正)
その他
「グリニッチ・ビレッジのエイリアン -ストリーバー「コミュニオン」批判」The Village Alien
エッセイ
『S‐Fマガジン504号』掲載(訳:増田まもる)
「SF作家のSF作家、ディック」A Science Fiction Writers' Science Fiction Writer
エッセイ
『銀星倶楽部 12号』掲載(訳:山形浩生)
「SFの気恥ずかしさ」The Embarrassment of Science Fiction
講演録
『解放されたSF』所収(訳:浅倉久志)